INSTeM Convention 2024 Spring@東大本郷 福武ホール
「大人のためのリテラシー:これからの知恵と技法を考える」

レポート

05/01/2024

2024年3月9日(土)、10日(日)の2日間、「INSTeMコンベンション2024 Spring」を、東京大学本郷キャンパスの福武ホールにおいて開催した。

初の本格的な対面イベントとなった今回のテーマは、「大人のためのリテラシー:これからの知恵と技法を考える」。 

リテラシーとはもともと文字の読み書き能力、すなわち識字力を意味する。メディア・リテラシーは、現代社会におけるメディアを文字のようなものとしてとらえ、メディアの読み書きをめぐる一連の営みや教育のことを指している。スマートフォンやSNS、生成AIなどが急速に普及するなか、デジタル時代のメディア・リテラシーの必要性が叫ばれている。一方で近年は、金融リテラシー、環境リテラシーなどの幅広い領域で、これまでの枠組みに収まりきらない学びや協働活動を指して「リテラシー」という言葉が使われつつある。

子どもには学校などでメディアや環境のリテラシーを学ぶ機会がある。では大人はどうか。高齢化が進む日本社会で、大人がリテラシーを学ぶ場が必要ではないか。その学びのための知恵や技法はどのようなものか。今回は、各地で活動されている方々22組にお集まりいただき、展示やトーク、ミニワークショップなどを行っていただいた。

第1日目。土曜日午前に各地から出展者が集まり、あらかじめ用意された長方形のダンボール板2枚を使って、それぞれのブースづくりを進めた。位置取りや文房具の貸し借り、ポスターの貼り付け、POPの作成などを、近隣の出展者同士が協力し合いながらワイワイと進め、まるで大人のための学園祭だという声があがった。

午後のオープニングは、INSTeM理事長であり、研究部ディレクターの佐倉統からのあいさつとINSTeMの概要説明で始まった。続いてサブディレクターの水越伸からINSTeMコンベンションの趣旨とプログラムの紹介があった。そして今回設けられた「科学とデジタル技術」「ビジネスとライフスタイル」「市民社会とデザイン」という3つのカテゴリーをとりまとめる松下慶太氏(関西大学)、研究部コーディネーターの鳥海希世子による説明があり、いよいよコンベンションの始まりとなった。

それ以降は各ブースでの活動紹介とトーク、ミニワークショップが福武ホール地下2階のあちこちで同時多発的に開催され、その様子は、まるでバザールや縁日のようだった。そうした雰囲気が出展者や参加者にも伝わることでコンベンションは祝祭的で非日常的な場になったといえる。普段とは違う語り手や聞き手が交わり合うなかで、それぞれが違う領域に関心を持ち活動に取り組んでいるにもかかわらず、共通の課題や可能性を抱えていることに気づき、共感し合う人々があげる歓声をあちこちで聞くことができた。

午後5時過ぎからの懇親パーティでは、あちこちで話の輪ができ、それらが交わっては分かれ、新たな輪ができるということが、和気藹々とした雰囲気のなかで繰り返された。ケータリング業者の方にまでスピーチをしていただくなど、パーティ自体がワークショップデザインとファシリテーションの実践の場となったようで、予定時間を超過して盛り上がった。 

第2日目。前日の熱気が冷めやらぬ福武ホールでは、午前中からトーク、ミニワークショップ、出展ブースの説明などがあちこちで続行された。この種のイベントでは2日目は参加人数が減る傾向があるが、1日目とほぼ同じ数の参加者があちこちで出展者と話し込む姿が見られた。11時45分から13時まで行われたクロージングセッションでは、研究部コーディネーターの宇田川敦史、松下氏と鳥海から、3つのカテゴリーで括られた22組の出展の様子について総括コメントがあり、さらに各出展者が感想やコメント、今後に向けての要望などを語った。それらを受けて、学習経営論の中原淳氏(立教大学)、INSTeM研究部コーディネーターの山本貴光、吉川浩満、村田麻里子、毛利嘉孝から、寸鉄人を刺すような、しかしユーモラスな総評が語られ、定刻に終了した。

2日間には出展者と一般参加者あわせて100名を超える方々が参加してくださった。出展してくださった方々、参加者のみなさんに、この場を借りてお礼申し上げたい。初の本格的な対面イベントとなった今回のコンベンションを、関係者一同、ドキドキしながら実施したが、出展者や参加者へのアンケートによれば、コンベンションが当初予定した以上に人や活動を結びつけるネクサスとしての役割を果たすことができたようで、おおむね成功裡に終わったといえる。ただし2024年1月の国際セミナーから2ヶ月足らずでの開催だったため、広報に十分な時間を割くことができなかったこと、いくつもの活動が同時並行的に進められたために参加者がじっくり全体を体験できないという開催形式の課題なども明らかになった。これらを踏まえ、コンベンションを定期的に開催していく方策を検討中である。