「推し」を語るということ
―推し語りデジタル・ストーリーテリングの展開(2)

03/15/2023
Shinya Mizojiri
溝尻真也

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今回紹介するのは、2022年8月に対面で実施した推し語りDSTで制作された2作品である。参加者は目白大学メディア学部溝尻ゼミの2年生だ。弊学では2年生の夏からゼミ活動が始まるため、参加した学生たちにとってはこれが初めてのゼミ活動だった。緊張気味の2年生は、こうしたDSTを何度も経験している3年生とペアを組み、先輩たちのファシリテーションを受けながら自らの推しを語り、作品化していった。およそ1時間のワークショップで10作品が完成し、その場で発表会が行なわれた。

最初に紹介するのは「聖地巡礼」と題した作品である。

「聖地巡礼」

コロナ禍の影響で楽しみにしていた「推し」の公演が中止になってしまったショックと、そのショックを乗り越えて別の楽しみを見出すプロセスが語られた作品である。コロナ禍に見舞われて以降、多くの人がこうしたショックを味わい、そしてその中から何とか楽しみを見つけ出す経験を積み重ねてきたのではないだろうか。

2作品目は「10年の想い」と題した作品である。

「10年の想い」

自分が推しているアイドルへの想いをシンプルに語った作品だが、最後の一言に語り手の強い感情が込められている。「推し」の存在は永遠ではなく、いつかは終わりを迎えることを当事者は理解しており、だからこそ対象を推しているいまこの時間こそが「尊い」ものになっていることが分かる作品である。

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